タイミングを見計らっていたのか、猫は外に飛び出していってしまいました。
そして、探して見つけ出した時には、あの子は変わり果てた姿になってしまった。
私はバスタオルにあの子をくるみ、その場で泣き崩れてしまった。
自転車で通りすぎる人、横を走る車、みんなが止まり
「どうしたの?大丈夫?」
と声をかけてきてくれた。
でも、その声にも答えず、私は声をあげてあの子を抱きかかえて泣いた。
まだ体があたたかったことが、悔しかった。
毎朝、あの子は決まった時間にパパを起こし、餌ををねだるのが日課であった。
パパの眠い目をこすりながらも、おねだりするあの子に餌をあげてから朝の一服をする。
あの子が死んだ次の日の朝、パパはいつもの時間に起きてきた。
そして、ソファーに座りたばこに火をつけた。
だけど今日は、足にまとわりついてくるあの子がいない。
パパの背中がさみしそうで、また涙がこみあげた。
あの子はいつも長男と一緒に二階に上がり長男のベッドで一緒に寝ていた。
あの子が死んだ時、呆然としていた長男が、ベッドで夜泣いていた。
私は、声をかけてあげることができなかった。
親として、悲しんでる子供をなぐさめてあげなければいけなかった。
でも、その長男の姿を見た私は、その場でうずくまって声を殺して泣き崩れてしまった。
食事の用意をしていても、掃除をしていても、涙が勝手にあふれてくる。
泣いている私に息子は、
「次はどこ掃除する?手伝うよ」
とやさしく声をかけてくれた。
「ママが隊長で、僕は副隊長になって掃除しようっ!」
泣きっぱなしでブサイクになっている私は、
「隊長ばっかで部下がいないじゃん」
と、ぐしゃぐしゃの顔で笑った。
あの子が死んでから、初めて笑った。
『くよくよしていたらいけない』
息子が教えてくれたようでなさけなかった。
今日で、もう泣くのは終わりにしよう。
あの子とのいっぱいの思い出を胸にしまい、今日からいつものママにもどるからね