さよ
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本当は怖い!日本のしきたり
2024年8月13日(火) 10:27

~『ミョウガを食べると物忘れをする』は濡れ衣?~


落語に「茗荷宿』という噺がある。
ミョウガを食べると物忘れをすると知った宿屋の主人とおかみさんが、泊まり客に「ミョウガづくし」の料理を食べさせる。
翌朝、客が宿を立ったあと、何か忘れ物をしていないかと部屋を確かめるが、何もない。


ところが、客は宿費を払うのを忘れていた……という一席である。


「ミョウガを食べると忘れ物をする」という言い伝えに、科学的な根拠はない。
少なくとも現時点では、医学的にその因果関係は証明されていない。


ではなぜ、そのような話が長く伝わったのか。
その答えは、まず紀元前五世紀前後にまでさかのぼる。


お釈迦様の弟子の中に、魔訶槃特と周利槃特という兄弟がいた。
兄の魔訶槃特がとても優秀だったのに対し、弟の周利槃特は愚かだったと伝えられている。


伝えられるところでは、教えを憶えることができないどころか、自分の名前さえ忘れたりした。
自分の名前を布に書いてのぼりにし、托鉢するほどだったという。


その周利槃特の死後、彼の墓場のそばに生えた草がミョウガだった。
そこから「ミョウガを食べると自分の名まで忘れるようになる」という話が広まり、やがて「ミョウガ=物忘れ」というミョウガにとっては、まるで濡れ衣のようなイメージが定着したというわけだ。


だが、周利槃特の名誉のために紹介したい話がある。


一時は優秀な兄によって還俗させられそうになった周利槃特だが、それを知ったお釈迦様が、周利槃特に一枚の布を与えて「塵を払い、垢を除く」と唱えさせ、掃除を言いつけた。
すると、周利槃特は「落とすべき汚れとは、貪、瞋、痴の心の汚れ」と悟り、のちには十六羅漢の一人に数えられるまでになっている。


つまりは、立派なお弟子さんだったわけで、お釈迦様の慧眼には畏れ入るばかりだ。

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