内幸町という街。
いつも不思議な感覚を
覚えます。
新橋や日比谷、虎ノ門といった
賑やかなエリアに
挟まれているにもかかわらず、
そこには
まるで透明な膜が
張られているかのような
静けさがあります。
目立たず、
観光地というわけでもないのですが、
私はその控えめな
佇まいが好きです。
高層ビルが連なる
新橋の風景から
ほんの数歩離れただけで、
内幸町の落ち着いた
街並みが広がります。
その差が
まるで異なる世界へと続く
秘密の扉を見つけたかのような
感覚にさせてくれるのです。
夕方に訪れると、
内幸町の景色は
魔法のように変わります。
あの時間帯、
新橋方面のビル群が
太陽の光を受けて
黄金色に輝いています。
普段は息苦しさを感じる太陽が、
その瞬間だけ、
なんだか
美しいと思えてしまうのです。
足が自然と止まり、
しばらくその光景に
見とれてしまうことがあります。
何でもない街の一角で、
憎らしいほどに眩しい夕日が、
ふとした瞬間を
特別なものに変えてしまうのです。
そのまま少し歩けば、
東京タワーが見えるはずなのに、
虎ノ門ヒルズが
あまりにも大きすぎて、
東京タワーの存在を
忘れてしまうことがあります。
増上寺だって、
こんな近くにあるのに、
なぜか記憶の片隅に
追いやられています。
虎ノ門ヒルズという
巨大なビルの陰に
隠れてしまった
歴史の断片を思い出すたびに、
私はこの街の複雑さに魅了されるのです。
新旧が同居するこの風景は、
まるで忘れられた
記憶の中で彷徨っているような、
そんな気分にさせてくれます。
内幸町の
静かなカフェでひと息つくと、
どこかホッとします。
その瞬間、
自分が都会の喧騒から逃れて、
一時的に時間が止まったような気分に。
だから私は、
またこの街に足を運びます。
決して派手さはないのですが、
そこには
静かで穏やかな時間が流れています。
その控えめな美しさが、
私にはどうしても愛おしい。
日比谷通り
新橋仲通り
みなみ