俵星玄蕃
槍は錆びても、この名は錆びぬ
男玄蕃の心意気
赤穂浪士の影となり
尽くす誠は槍一筋に
香る誉れの元禄桜…
姿そば屋にやつしてまでも
忍ぶ杉野よ切なかろ
今宵名残に見ておけよ
俵崩しの極意の一と手
これが餞、男の心…
涙を貯めて、振り返る
そば屋の姿を呼び止めて
せめて名前をきかせろよと、
口まで出たがそうじゃない
云わぬが花よ人生は
逢うて別れる運命とか
思い直して俵星
独りしみじみ呑みながら
時を過ごした真夜中に
心隅田の川風を流れて響く
勇ましさ一打ち二打ち三流れ
あれは確かに確かにあれは
山鹿流儀の陣太鼓…
打てや響けや、山鹿の太鼓
月も夜空に冴え渡る
夢と聞きつつ両国の
橋の袂で雪踏みしめた
槍に玄蕃の涙が光る…