カンカンカンカンと目の前で
腕木が横断を遮る
「はいココから先、貴方は行けません」

電車が轟音と共に1メートルにも満たない
目の前を走り行き、風圧でよろけて
電車の方へ吸い込まれそうになる

音が止み、腕木が真っ直ぐに立ち上がる
「はい通って良いですよ」

うだるように蒸し暑い6月のなかば
黒雲に覆われた空からは生ぬるい雨が
勢いよく降り続いた

通り過ぎる人足は早く、色とりどりの傘は
小川の花びらのようにコツリと
当たっては流れ、また当たる

あの日からずっと私はココにいる

電車の風圧に吸い込まれて、
気づいたら立っていた

周りには似たような人が
ぽつりぽつりと点在している
老いも若きも、薄ぼんやりとした姿で
ただ立っている

立ちながら、ぼんやりと腕木を眺めている

カンカンカンカンと音が鳴り
腕木は横断を遮る
「はいココから先、貴方は行けません」

ココから先に行ける日は
来るのだろうか

あの世とこの世の境目なんだろうか
何も分からない




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