祖父が内緒にしたがった理由が
なんとなく分かった気がした
あの箪笥に残された他の小物達のことも
気になったが、それは欲張りかもしれない

長居も悪いと姉夫婦にお暇を告げて
なんの気もなしに
祖父の家の近所の犬の話をした

すると姉は訝しむような表情で
「あら、あそこのお宅は住む人も亡くなって
今は誰もいないはずよ」
と首を傾げた

椿の垣根から、確かに聞いたと言えば
「ふざけちゃって、もう。悪い子ね。
椿の垣根は祖父が亡くなってから
手入れする人も無いからと私達が処分したわ」

怖がりな姉は怒るような顔で言う
では昨夜見たものは何だったのだろう
茫洋としたまま姉夫婦の家を後にして
ふと椿の花言葉を思い出した

「控えめな優しさ、誇り」

さては祖父か、祖父の弟という人に
呼ばれたのかもしれない
どうか椿姫ではないことを祈りながら
天才の石と謳われるホタル石を握りしめた

終わり


あと今年も僅かばかりですが
お世話になりました
良いお年をお迎えください


次回1月6日
10:00〜16:00
ご用命をお待ちしてます

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