その頃から、彼女の瞳には何か特別なものが宿っていた。遊びと称して私を「支配」することに、純粋な喜びを感じているような。でも不思議と、私はその「壁」の中で安らぎを覚えていた。
「ねぇ、また捕まえていい?」
大人になった今でも、彼女はそう囁いてくる。声は変わっても、瞳の奥に潜む悪戯っぽい光は、あの頃のままだ。
「今日は何色の光で私を染めるの?」
彼女は明るく笑う。周りの誰もが知る、活発で可愛らしい彼女。でも私だけが知っている。その笑顔の裏に潜む、甘い闇を。
「今度は青い光よ。綺麗な、深い青。あなたの意識が溶けていくような...」
その言葉に身を委ねると、確かに意識が遠のいていく。これは逃避なのかもしれない。でも、彼女の手の中で溶けていく感覚が、どこか懐かしい。
幼い頃から、私たちはこうして遊んでいた。彼女の中の「悪」に飲み込まれることで、私は安らぎを得る。それは今も変わらない、私たちだけの儀式。
意識が朧げになっていく中で、彼女の柔らかな手が頬を撫でる。「もう逃げられないよ」という言葉が、まるで子守唄のように響く。
そうだ。彼女の闇の中で、私は今日も静かに堕ちていく。それが、私たちの幸せな終わり方なのかもしれない。