窓から差し込む午後の陽射しが、少しずつ暮れていく。彼女の指先が、そっと私の手首に触れた瞬間、体の力が抜けていくのを感じた。
「ね、リラックスして」
その声は、どこか遠くから聞こえてくるような気がした。逃げたい。でも指先の力が溶けていく。手首に触れる彼女の指が、少しずつ上がっていく。
「大丈夫、ゆっくりでいいの」
抵抗しようとした腕に力が入らない。むしろ、彼女の手のひらに溶けていくような感覚。意識が遠のいていく中で、かすかに香る石鹸の匂い。
「こんなにも硬くしていたんだね」
首筋に触れる指先に、言葉にできない声が漏れる。自分の意思とは関係なく、体が彼女の手に従っていく。
「もう、がんばらなくていいの」
耳元でささやかれる言葉に、最後の理性が溶けていく。ただ、彼女の手のひらの中で、自分が溶けていくような心地よさだけが残っていた。
窓の外は、いつの間にか夕暮れに染まっていた。