正直に言うと、「ちょっと重そうな映画だな」と思いながら観はじめた。
Amazonプライムでたまたま目に入って、なんとなく気になった。それだけの理由で再生ボタンを押したのに、観終わったあとは完全に言葉を失ってた。
感動した、とか、泣けた、とか、そういう感想じゃない。
怒りとか、共感とか、胸が痛むとかどれもしっくりこなくて、ただ静かに、心のどこかに刺さった感じ。
じんわりと、自分の中で何かが変わってしまったような感覚があった。
主演の宮沢りえさん、すごかった。
正直、最初は「表情に感情があんまり出てないな」と思っていたのに、気がついたらその無表情に引き込まれていた。
感情が見えないのに、感情が伝わってくる不思議さ。
多分、目。あの目の奥にあるものを、こっちが勝手に読み取ってしまってるんだと思う。
映画の中で語られるのは、加害と被害、そして許せなさの話。
でも、誰かを一方的に責めたり、正しさを振りかざしたりする話じゃない。
ただ、「それでも生きていくしかない人」の物語なんだと思った。
見ていて苦しくなるシーンもある。でも、その苦しさがちゃんと必要で、ちゃんと丁寧に描かれていた。
映像もすごく印象的だった。音楽もほとんどなくて、ただ淡々と進んでいく。
静かすぎるくらいの静けさ。だけどその静けさに、何度も心が揺さぶられた。
あえて言葉を削ってるところが多くて、余白にこそメッセージが詰まってるような、不思議な映画。
観終わったあと、しばらくぼーっとしてしまって。
誰かに話したいけど、うまく言葉にできない感じ。
だから、せめてこの気持ちだけでも書いて残しておこうと思って、今これを書いてる。
もしかしたら、観た人の中には「難しい」とか「重すぎる」と感じる人もいるかもしれない。
でも私は、この映画に出会えてよかったと思ってる。
きれいごとも、救いもないかもしれない。けど、そのぶんリアルだった。
そしてそのリアルさに、ちゃんと寄り添ってくれてる作品だった。
ちょっと心に余裕があるときに、ぜひ観てほしい。
無理に泣かせたり、無理に感動させたりしない、本当に静かな映画だから。
その静かさの中に、自分自身の気持ちが見つかるかもしれない。