他人からされた嫌な事と、
自分がした良い事は、
忘れてしまいます。
日記についても、沢山のリクエストを頂いて、
あー、そういえば、あんな事も、こんな事も、、、って、いーっぱい思い出します。

昔、でもしか教師、という言い方がありました。
志や、生き様や、知性や、教育の仕方などが、本来の教師に相応しくなくても、
教師にでもなるか、教師にしかなれない、
みたいな教師も沢山いたからです。

日本で短期のスクーリングをした小学校で、ポスターを描く時間がありました。
私としては、何を訴えるのか意味を深く考えて、よし、これだ！と、一気に仕上げられたので、いち早く先生に見せました。
すると、まだみんなが鉛筆で構図を思案している手を止めて、私のポスターを高く掲げて言いました。
「　こんなのはポスターではありません！
こんなズルはいけません！
ちゃんと子どもらしい絵を描きなさい！　」
その後、私たちの学年が卒業するまで、
私の特徴的なポスターは、みせしめのように、全校生徒の出入りする下駄箱の上に、
大きく、赤字で絵を描く事と貼り紙を添えて貼られていました。

3年後、再び中学校のスクーリングの為に、みんなの進んだクラスに入りました。
何故か、同じテーマのポスターを描く時間があって、私のポスターを覚えているAさんが近寄って来て言いました。
「　今度は絵を描くんでしょう？
私は面倒だから、あれをもーらった。」
張り出されていた私のポスターを、丸ごとそっくり真似て、笑って見せに来ました。

2週間ほどして、全校生徒が集められました。
校長先生が、Aさんを壇上に呼び出すと、
「　あなたのポスターが、文部大臣賞最優秀特別賞に選ばれました。　これは、我が校始まって100年の歴史の中で、初の、大きな大きな、輝かしい快挙です！　おめでとう！
皆さん、Aさんは、この学校だけでなく、
この街の誉です！　皆さんの自慢です！」
われんばかりの拍手の中、
Aさんは、壇上でばつが悪そうに一瞬私を振り向きましたが、正直に話す事はありませんでした。
そして、
某美術大学の附属高校から推薦入学の申し出があり、
総理大臣賞最優秀特別賞受賞者、として入学して行きました。

Aさんのその後の人生には、総理大臣賞最優秀特別賞受賞者、という肩書きが、黄門様の印篭のような問答無用の盾となり、
私こ描いたあのポスターが、あちこちのテレビや沢山の場面で使用されて続けています。