昔でいう5倍速で動かねばなりません。
プロの手を借りるお金も時間もありません。往復の移動に、タクシーを呼ぶお金が欲しいと思ったくらいです。
残されていた子たちを、優しく、しかし、急いでシャンプーし、毛を整える間も、皆おとなしく、私を舐め続けていました。
ゲージも消毒し、掃除して、来て頂いた獣医師に確認して頂き、慌てて譲渡会場に戻りました。
よし、あと、1時間、、、。
ところが、会場に着くと、外の案内も外され、後片付けが始まっていました。
1家族が、手続きの記入を終えるところでした。
「今日は大盛況で、やはり、可愛い子は取り合いでしたよ。」
「みんなお家が決まったのですか？」
「まさか、残った子たちはあそこです。」
例の厚い布に覆われた幾つものゲージが、
折りたたみのテーブルの後に、荷物のようにつをに積んでありました。
「待って、あと1時間ありますよね？
案内を外に出しましょう！ギリギリのご縁でも、何かあるかもしれませんから。」
「えー、また？もう、片付けたのにー？
早く帰れるかと思って、さっき約束入れちゃったんですよねー。」
「でも、この子たちは、今日、譲渡されなければ殺処分になってしまうのですよね？
あと1時間しかないのですから、頑張りましょう！」
「そんなこと言ったら、キリがないですよ。どうせ、その子たちじゃ、貰い手はないですよ。」
そこへ建物の管理の方がやって来て、
「目の前の車、あとどれくらいで動かせますか？」
「今から荷物を積むので、すぐです。」
私を振り向き、両手でバツを作り、
「終わり」
と言いました。
今日のイベントが終わり、みたいに軽く、
命の終わり、を宣言されてしまいました。

シンドラーの嘆きのように、
私がもっとお金持ちで、この子たちの命を引き取る事ができていたら、、、と、張り裂けそうに堪らない気持ちで、
週明けの、輝く青空に立ちのぼる、あの煙を見守っていました。
頭に鳴っていたのは、ちあきなおみの喝采ではなく、ユーミンの飛行機雲、、、。